【賛成討論】市役所の位置を定める条例

2022-12-26

 本日、12月定例会最終日の本会議において、市役所の位置を定める「鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例の制定について」の採決が行われました。

 条例改正には出席議員の三分の二以上の賛成が必要な特別多数議決となっており、出席議員26名のうち18名以上の賛成が必要な議案で、結果は賛成16名、反対10名となり否決となりました。

 各会派や議員より、議案に対する討論があり、我々会派「夢みらい鎌倉」は賛成討論をしました。以下に長文となりますが、討論内容を記載いたします。


 議案第51号鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例の制定について、夢みらい鎌倉を代表して賛成の立場で討論に参加いたします。

 本市の本庁舎を始めとした公共施設は、昭和30年代から40年代にかけて行われた大規模な宅地開発により、集中的な人口増加に合わせて整備されてきたものです。2012年に起きた笹子トンネル事故をきっかけとして全国的に公共施設の老朽化が問題となり、本市においても平成27年3月に公共施設再編計画を策定し、老朽化した市内の公共施設の今後の在り方が示されました。今後、人口減少が予想され、さらには昨今の厳しい財政状況の中、持続可能な都市経営を進めて行くためには公共施設の再編が必須の課題であると認識しております。

 現在の本庁舎は、昭和44年に整備され、整備から53年が経っており、建物や設備の老朽化、さらには行政需要の増大に伴う職員数の増加等によって執務スペースが手狭となり、分庁舎や敷地外に執務室を設置せざるを得ず、業務の非効率化が見られ、市民生活への影響も出てきている状況といえます。

 特に問題と考えられるのは現庁舎の耐震性であり、耐震改修等によりIs値0.6の耐震性は確保しているが、震度6クラスの地震では倒壊の危険性は低いものの、市役所機能としての業務継続に求められるIs値0.9の耐震性は有しておらず、大規模な地震が発生した場合は業務継続が困難であり、市民生活への大きな影響が考えられます。

 公共施設再編計画では、「本庁舎は本市の防災中枢機能を果たす施設の一つであることから、現庁舎の防災的な課題解決に取組みながら、現在地建替え、現在地長寿命化、その他の用地への移転方策などについて検討し、平成 28 年度までに将来の整備方針を決定する。」と再編内容が示されています。

 これを受け、平成28年度に本庁舎整備方針策定委員会が設置され、「防災・減災」、「機能・性能」、「まちづくり」及び「時間・コスト」の観点から検討が進められ、平成29年3月に「本庁舎整備方針」が策定されて、最終的にその他用地へ移転して整備する方針が決定されました。

 現在地での建て替えでは、風致地区による建物の高さ制限(10m)により高層化ができないことや、埋蔵文化財包蔵地に指定されているため、遺構に影響を与えないためには最大でも2階建ての高さの軽量な建築物とする必要があり、本庁舎としての機能を維持するために必要な床面積が確保できないことや仮庁舎への引っ越し費用等がかかることなどから、「本庁舎は移転して整備する」方針が決定されたと認識しています。

 その他用地をどこにするかは、平成29年度に『公的不動産利活用推進方針』が策定され、深沢地域整備事業用地と梶原4丁目の野村総研跡地が候補になりましたが、市民の利便性やまちづくりの視点で評価が行われ、移転先が深沢地域整備事業用地に決定されました。

 その後、令和元年7月には『鎌倉市本庁舎等整備基本構想』を、令和4年9月には『鎌倉市新庁舎等整備基本計画』が策定されました。また、住民要望が多かった現在地の活用については、本年9月に『市庁舎現在地利活用基本構想』が同時に策定されました。

 それぞれの計画、構想の策定に当たっては、移転して整備していく方向性が決まってから5年あまりの歳月をかけ、専門委員はもちろんのこと、多くの市民も参加し、市民対話やワークショップ等を行い、多くの時間と労力をかけて策定されてきたものと認識しています。

 また、移転先の深沢整備事業用地の浸水洪水の懸念については、深沢地区まちづくり方針実現化検討委員会防災部会報告書で専門家が明らかにしています。

 最大規模の想定である年超過確率 1/1000(24 時間で 632mm)の降雨に対しては、地区全域で 0.5m未満~3mの浸水が想定されるとしていますが、「どのような被害が生じる可能性があるかを正しく認識し、災害発生時の避難や事後対応のあり方を考えるためのものなので、この降雨に対して対応可能なハード対策としてのインフラを整備することは、経済的にも環境的にも現実的ではなく、ソフト対策も含めた対応策を推進していくことが重要」としています。

 今回の事業計画では、年超過確率 1/100(24 時間で 302mm)の計画規模の降雨に対しては、24,000㎥の雨水調整池をあらかじめ設置する計画であり、最大想定規模1/1000確率(24時間632mm)の浸水に対しては、宅盤を上げるとともに、今後しっかりとしたソフト施策を構築していくことで災害に強く、受援力が備えられると考えています。

 また、洪水浸水で被害が最も甚大化する最大の原因は堤防の決壊ですが、柏尾川は掘り込み河道であり、浸水が広がるスピードは緩やかで水位の上昇も急激にはならないため、鬼怒川や岡山県において発生した堤防決壊のような流速の速い浸水にはならないと報告されています。

 以上のことから、先ずは現庁舎の耐震性に大きな不安があり、30年以内に70%の確率で発生予測されている南海トラフ地震や首都直下地震など大規模な地震が発生した場合でも、市民の拠り所となる庁舎がしっかり機能を果たす庁舎であるためにも、本庁舎移転は喫緊の課題であると考えます。

 さらに、本庁舎移転は公共施設再編計画の柱となる施策であり、本庁舎が移転することにより現庁舎跡地の活用が可能となります。

 『市庁舎現在地利活用基本構想』では、市民の皆様が行う諸手続きや相談に必要な窓口はしっかり残し、さらには老朽化した中央図書館や学習センターの複合化も構想に入っており、市民サービスの提供・公共施設再編と民間機能の導入による賑わいや憩いも創出する場として市民のための利活用が検討されています。また、新庁舎へは、老朽化とともに地盤が心配な大船消防署と深沢消防署の集約化による併設も計画されており、本市が抱える様々な課題解決のためにも、鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例の制定について強く賛成するものです。